#37 「Lactosérum」が発信する、チーズとホエイの新しい魅力。
ここにしかない、に会いに行こう。

そこはまさに昔ながらの商店街。東近江市八日市にある「ほんまち商店街」は、レトロな雰囲気に新たな魅力が加わったとても素敵な通りです。この中にあるヴォーリズ建築を再活用した複合商業施設「Honmachi93」の2階で2023年1月にオープンしたのが、今回伺った「Lactosérum(ラクトセロム)」。古株牧場から2024年に独立したチーズ職人・古株つや子さんの新たな活動拠点となったこのアトリエ(工房)について、併設するカフェ&バー「Y-s」とともにご紹介します!

 

ホエイの行く先、チーズづくりの行く先

 

店名の「Lactosérum」とはフランス語で乳清のこと。別名はホエイ。チーズを作る際に大量に出てくる副産物の水分です。

乳酸菌と凝乳酵素(レンネットとも)を入れて生乳を固めることから始まるチーズづくり。その固形物だけを熟成したものがチーズとなり、対して出てきた水分がホエイです。作るチーズにもよりますが、8割から9割ほどが水分として出ていってしまうのだそうです。

 

2014年のJAPAN CHEESE AWARDで金賞を受賞した「つやこフロマージュ」(※)を送り出しているつや子さん。例に洩れず、この製造過程でも大量のホエイが生成されていました。大手の事業所でない限り廃棄されることの多いこのホエイのあり方には、長年課題感を抱いていたといいます。

「副産物のホエイは、栄養価の高い水分だということと美容効果もあるということが研究結果でも多く出ています。なので、捨てるだけではもったいない、ホエイをなんとか活用していきたいと、チーズを作りながらずっと思っていました」


※リンク先「つやこフロマージュ」記事は2022年の取材当時のものになります

 

ホエイを煮詰めてさらにチーズを作ることもできるそうですが、それでも完全に使い切ることは簡単ではないのだそう。プロテインなどへの加工についても「個人事業としては費用面でかなり厳しく、なかなか踏み出せないのが自然な判断」だといいます。

 

そこを変えていける形を模索するのが「Lactosérum」です。ホエイの特色を生かした商品開発を考えていたつや子さんは新たな活動拠点を探していました。

「牧場では酪農をしながら絞ったミルクで乳製品を主に作っていたので、ホエイを使っていくものは完全に別のブランドとして立ち上げようと考えました。これまでと違った活動スペースがほしいと思っていたところ、たまたまここのオーナーさんと知り合い、使わせてもらうことになりました」

 

ここではチーズづくりをすると同時に、ホエイを使った飲料、ホエイを使った美容液の開発などを手掛けているつや子さん。国産のものも含めてチーズの需要が年々伸びてきているからこそ、持続可能な農業サイクルにチャレンジします。

 

「美容液や飲み物以外にももっともっと可能性があると思っています。これからもチーズを作り続けていくために、そのまま廃棄物とすることなく、出てきたホエイを活用していかなければならないという想いです」

 

 

洋菓子とチーズとお酒のお店「Y-s」

 

この工房の隣にあるのが、カフェ&バー「Y-s(ワイス)」。コンセプトは“洋菓子とチーズとお酒のお店”です。店主であるパティシエの桂川さんは神戸の有名パティスリーで修行を重ねた腕利き。草津で働いていたころにつや子さんと知り合い、その出会いがきっかけで「Y-s」オープンに至りました。

「オーナーさんから『このスペースでチーズを作って、それと連動させられるような腕のある人を呼んできたら?』と言われて。誰かいるかな?と考えたときに、私のチーズを使ってケーキを焼いてみたいと言ってくれていた熱意のあるパティシエがいたことを思い出しました。やってみない?と振ったらどう言うかなと思いながらも声をかけると、『やります』と言ってくれたので、彼自身の店として名前を付けてスタートしたという感じです」

 

Y-sでは、Lactosérumで作られるチーズや和の食材を取り込んだスイーツ・焼き菓子などを中心に提供します。特にチーズケーキは、桂川さんの念願が叶った力作!

 

Lactosérumのチーズは味がダイレクトにわかりやすいものが多いといいます。洋菓子に変換しやすいチーズの開発・販売や、提供するお酒に合わせたチーズの提案もするなど、Y-sは、ここにしかない唯一無二のチーズ体験ができるお店です。

「彼自身、地元のものや滋賀県産のものにこだわったスイーツづくりをしていきたいと考えています。私のチーズを使ってくれたのも、滋賀県産のものを探しているなかで見つけてくれたことがきっかけ。地元醤油屋さんのお醤油やお味噌を使ったものも提供していて、和の食材と合うような発信をしていることは私に共通するところでしたし、彼のコンセプトは分かりやすく、とてもやりやすかったです」

 

お酒とのペアリングもこのお店の楽しみ方。イチオシは、ホエイを使ったミード酒『プチ・レ・ミエル』。

 

「いろいろと調べてみると、その昔バイキングが、ホエイを使って蜂蜜で発酵させた『ブラウンド』というお酒を飲んでいたという歴史が残っているみたいです。ここでは、それをもとにしたミード酒として、フランス語で“ホエイと蜂蜜”という意味の『プチ・レ・ミエル』という名前で提供しています」

 

お昼前後にカフェ利用するも良し、夕方以降で飲みながらも良し。洋菓子とチーズとお酒と、それぞれを楽しめるのが「Lactosérum」であり「Y-s」です。

「“ここだけの”というところが一番のこだわりの部分。出来立てのチーズはなかなかない。お酒とチーズのぺアリングはもちろん、お酒が飲めなくともケーキやチーズ単体でストーリーを感じてもらいたいし、このお店ならでは、ここの地域性を絡めた発信をしていきたいです」

 

 

なんかワクワクする八日市

ヴォーリズ建築の複合商業施設「Honmachi93」自体は、もともと歯科医院でした。【御診察のお方は二階へ】【レントゲン室】なんていうサインは、その時代のまま!レトロ調のものが好みだというつや子さんは、この雰囲気に惹かれるものがあったといいます。

 

「大家さんの家系は代々歯医者さんをされているそうです。ヴォーリズ建築の雰囲気をそのまま残していらっしゃるのがまた良くて。今は若い世代に店舗として貸し出しながらも、この建物を残していきたいという想いを感じます」

外観だけでなく扉や階段の手すりからは、使われてきた年月の長さを感じ取ることができます。棚やガラスなどもほとんど変更することなく、元の意匠のままに利用。ゆったり過ごすカフェ&バーに、なんとも落ち着いた雰囲気がなじんでいます。

 

昔ながらのものや地域性を大切にしつつ、若い世代や新しい魅力を加えてきたほんまち商店街。つや子さん自身、地域の人に応援してもらったり、みんなで盛り上げていけるような空気感があったり、優しいまちだと表現します。

 

「コミュニティとしては『八日市ってなんか面白いかもしれん』と思ってもらえるような仕掛けづくりが少しずつできてきているのかなとも感じます。ある方に教えてもらって八日市に来たとき、ワクワクするような印象がありました。そこからお店のオープンに向けた話がとんとんと進んでいったので、その時の自分の感覚やタイミングを信じて、今に至っています」

 

いいみせ、いいひと、いいものがある「ほんまち商店街」も、今後ひそかに楽しみな存在です。

 

 

チーズとホエイの新しいかたち

Lactosérumのロゴには「いろんなものが融合していく、なにものにも変化していく」という想いが表現されています。チーズ職人・つや子さんが模索する“チーズとホエイの新しいかたち”。最後に、その原動力について尋ねてみました。

 

「今あるやり方のままで、利益を上げていくことは可能なんです。でも『出てくる廃棄物を捨てるばっかりでよいのか』というところにアプローチして、将来的に続く新たな農業のサイクルを生み出せるなら、それにやりがいが出てくる。私はそこにずっといるだけ」

 

「コストがかかるし、うまくいくかなんて保証もありません。チャレンジすることにリスクはあるのですが、次は何ができるだろうと新しいことを続けていくことこそに、私は生きがいを感じています。引きで見たときに、結局“生きてて何が面白いか”ということなんですよね。さまざまなアプローチをすることで、『こうやったらホエイが無駄にならないよ』ということを広めていく役割を担えたらと思っています」

 

ある種使命感のようで、それでもつや子さん自身が楽しんで取り組んでいるからか、どことなく晴れやかな表情に見えたことがとても印象的でした。

「ホエイにはまだまだ可能性があると思っていて。高たんぱくで栄養価が高いので、高齢の方の介護医療向け食材や、離乳食、アスリート向けなど、いろいろな分野への転換ができると思います。ひとりでできることでもないので、いろんな生産者さんとかかわりながらホエイを無駄なく活用できるような事業に強化していきたいですね」

 

チーズづくりにおける課題に立ち向かいつつ、チーズとホエイの魅力を発信する「Lactosérum」。ここにしかない新しいかたちは、カフェ&バー「Y-s」とともに形作られていくことでしょう。

「『他では食べられないから、わざわざ行きたい』と思ってもらえるようなお店になれれば。パティシエと一緒に、より興味を持ってもらえるようなチーズ教室とか開いてみるのもいいですよね。ここでないと食べられない、感じられないものをぜひ楽しんでほしいです」

 

Information

Lactosérum

滋賀県東近江市本町7-6 2階Google Map
定休日:月・火・水曜日
営業時間:14:00〜23:00

Instagram / オンラインショップ

 

※上記は2024年3月1日現在の情報となります。

Y-s 洋菓子とチーズとお酒と。

滋賀県東近江市本町7-6 2階Google Map
定休日:月・火・水曜日
営業時間:13:00〜23:00

Instagram

 

※上記は2024年3月1日現在の情報となります。

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