#21 次世代の水耕栽培農法を行う「ビワコアクアポニックス」。
エビとトマトを育てる非日常な農園とは?

アクアポニックス農法という、新しい循環型農法をご存知でしょうか?水耕栽培と養殖を掛け合わせた有機農法として、近年注目を集めているシステムです。そんな農法をもとに、滋賀県高島市でパーフェクトオーガニックな野菜作りにチャレンジしている、「BIWAKO AQUA PONICS(ビワコアクアポニックス)」にお邪魔しました。

 

 

まるで異世界!?500本以上のパイプで育ったトマトの摘み取り体験

 

煌々とLEDが光るビニールハウスの中は、白いパイプが立ち並ぶ不思議な空間。そのパイプの各所からにょきにょきと茎が伸び、丸いトマトが実っています。隣のエリアに移動すると現れるのは、オニテナガエビを養殖する大きな水槽。他にもメダカ、金魚やグッピーなどの水槽エリアや、きゅうりやスナップエンドウなどの野菜が育てられているエリアもあり、まるで植物園か水族館にやってきたのかと思うほどです。

 

2022年7月にオープンした「ビワコアクアポニックス」は、アクアポニックス農法で魚や野菜を育てている農園施設。4つに分かれた施設内を見学しながら、野菜やフルーツの摘み取り体験を楽しむことができます。その広さは、栽培エリアだけでも、合わせて1300平米以上!現在、トマトの摘み取りエリアでは、500本以上のパイプで育ったミニトマト、大玉トマトやカラフルトマトなど約30種類のトマトが育っています(※)。

※2022年10月現在

 

アクアポニックス農法の循環システムは、まず魚の排泄物をバクテリアが分解して養分に変え、植物がそれを栄養として吸収し、浄化された水が再び魚の水槽へと戻っていくというもの。一切農薬を使わない有機農法であるため、オーガニックな野菜を生産するシステムとして、世界でも注目を集めています。

 

 

愛着のある高島市に、最新の農園をつくりたい!

「ビワコアクアポニックス」を立ち上げた本郷さん夫婦は、消防設備業の会社を経営されています。将来を見据えて、一次産業から携われる企業をつくりたいと考え、農業の大学に通い直し、学び進めるなかでアクアポニックス農法に出会ったそうです。この画期的な農法に直感的に惹かれたと話します。

 

「作物を育てる手法やいい土地と巡り合う困難さも含めて、土耕栽培の難しさや大変さを感じていました。そんな中このアクアポニックス農法に出会ってこれらの困難さを解消できると思い、起業に至りました。」

 

この事業を進めるなら、生まれ育った高島市でやりたい!と強い思いを持っていた本郷さん。現在農場長として務める橋詰利治さんも、高校時代の同級生。もともと橋詰さんも兼業で米農業をしていた経験を持っていました。アクアポニックス農法に対して期待を抱いていた一人で、本郷さんの誘いを受けて、参画することに決めたそうです。

 

仲間や先輩が周りにいる、好きな環境である高島市。同級生が所有していた土地を借りて、地元を盛り上げようと動き始めました。

「大変だったのは、資材の搬入。高島市は雪が降るため、工事が止まる期間が長くありました。施設の設営にも地元の方々が力を貸してくれました。自分たちがイメージした形を、短時間で実現させることができた地域の縁は感謝しかありません。」

 

 

失敗を積み重ねて、学びを得る。前例のないチャレンジ

 

オープンに向けて、実際には2022年5月から野菜の育成をスタート。前任者もいない、手探りでの農作業が始まりました。

 

土耕栽培とアクアポニックス農法では、日々の作業が全く異なります。ポンプで水を回すので、配管の詰まりを解消するためのメンテナンスが日々の主な作業です。土耕栽培では必須となる土作りも、アクアポニックス農法では不要。ハウスの中なので雨や風の影響は受けにくく、雑草抜きも楽で害虫の影響が少ないというメリットも。トマトなど、年間を通して栽培できることも大きな強みだそうです。

「植物が栄養がたっぷり含まれた水分を必要なだけ吸収できるので、甘みが強くて青臭さが少ない、美味しいトマトになるのが、うちの自慢です。」

 

逆に、アクアポニックス農法ではバランスを取るのが難しいと橋詰さんは話します。

「野菜とエビ(生き物)の両方の様子を見て、どう調整するかを見極めるのが難しいですね。エビは生き物なので、思いもよらないところで調子が悪くなることもあります。例えば、エビの調子が悪い時に、水に何かを混入させることも可能ですが、それをすることで野菜にどう影響するかも同時に気にしなければいけません。今は毎日のデータを収集して、いい塩梅を探っている段階。自分たち自身が失敗や成功を体験することが仕事みたいなものですね。」

 

農業に興味を持ち、この事業のために移住してきた山本さんも、試行錯誤しながら野菜の成長を見届けています。前例の少ないこのチャレンジは、熱意のあるスタッフによって積み上げられています。

 

 

廃棄物をなるべく出さない。地球にも優しい、6次産業化を目指した農業を

農作業を行う上で心がけているのは、循環させることなのだそう。

「私たちはなるべくものを廃棄せず、循環したものづくりをしていきたい。大人にも子どもにも、安心安全な食事を届けたいという想いがあります。施設内で廃棄するものもなるべくなくしたい。トマトが成長する上で必要な芽かき後の草もコンポストに入れて、有機堆肥を実験的に作っています。エビを加工する際に剥いた殻も、乾燥させて粉砕し、再度エビの餌として活用しています。」

 

トマトとオニテナガエビという、他にはあまりない組み合わせにより成り立つ循環農法。「ビワコアクアポニックス」ではオリジナル製品の6次産業化を目指しています。第一弾として、『トマトとオニテナガエビのスープ』を2022年7月にオンラインで販売。好評のうちに完売し、次回の予定も進んでいます。

 

「廃棄前の食材を活用した弁当販売やこども食堂の運営を行っている滋賀県内の事業者の方と、コラボする予定です。これからも滋賀県在住の方と一緒に、滋賀ならではの地産地消メニューを開発していきたいです。」

 

南国のフルーツが、雪の降る高島市で育つかどうかも実験中。その他にも、1株で5万個のトマトを収穫するというギネス記録にもチャレンジしているのだとか。隣の敷地では、収穫した食材を実際にその場で食べられるカフェレストランも絶賛準備中です。

 

これから高島市から発信される、新しい農園。ぜひそのみずみずしい野菜たちに触れてみてください。

 

Information

BIWAKO AQUA PONICS

滋賀県高島市新旭町針江5-25Google Map
定休日:木曜日
営業時間:10:00〜17:00
TEL:0740-28-7797

ホームページ / Instagram / Facebook

 

※上記は2022年12月1日現在の情報となります。

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