#24 ナチュラル原料のピュアチョコレート。
自慢したくなるおもたせを目指す、「スマイルチョコレート」の想い

チョコレートを食べたいのは、バレンタインだけじゃない。口に頬張ると甘くて、そのかわいさは見ているだけで笑顔になれる。毎日通いたくなるチョコレート専門店を目指したという、ショコラティエの吉野智和さんが生み出すのは、植物性油脂を使わないピュアチョコレート。こだわりの詰まったチョコレートには、いったいどんな物語があるのでしょうか?

 

 

全種類集めたくなる、カードのようなチョコレート「マンディアン」

ズドンとまっすぐ抜けた、JR大津駅前からびわ湖へと続く中央大通り。駅から7分ほど歩くと左手に見えてくる、2階建ての小さなビルの1階に、THE SMILE CHOCOLATE(スマイルチョコレート)はあります。店内は、コンクリートと木材がミックスされたスタイリッシュな造作。グレーのコンクリート壁を背景に、陳列するカラフルなチョコレートたちが映えています。

 

「かわいい〜!」と思わず手に取ったのは、手のひらサイズの楽しげな「MANDIAN(マンディアン)」。15種類のラインナップが揃う人気商品で、チョコレートに大きさや形が異なるナッツやドライフルーツなどがコラージュのように組み合わされています(※)。商品のテーマは、マリアージュ。マリアージュはもともと結婚という意味で、価値のあるもの同士が重なり合うことで、新しい価値を生み出そうという意味合いがあります。

 

楽しいのはそのサイズ感!普通の板チョコの半分程度の大きさで、複数自由に組み合わせられるカードのよう。プレゼントに添えたり、自分へのちょっとしたご褒美にできたりと楽しみ方も豊富です。表情豊かなチョコレートの中から「どれにしようかな〜?」と選ぶ時間も、もうギフトのような時間かもしれません。

※時期によって、商品の数や内容は入れ替わります

 

1つ280円程度のマンディアンは、子どもがお小遣いを握りしめて買いに来られる価格帯。理想は町のお菓子屋さん、だとショコラティエ兼代表取締役の吉野智和さんは話します。

「近年、こだわったチョコレートが増えていますが、追求しすぎると難解な味わいになったり、価格が上がってしまったりします。僕たちが目指しているのは、シンプルでリッチなチョコレートであり、日常のちょっとした贅沢品という位置付け。味の開発にはこだわりながらも、子どもが食べても複雑でなく、“美味しい!”、“また食べたい!”と思ってもらえるような商品づくりを軸にしています」

 

 

すべて自家製。ピュアチョコレートへのこだわり

スマイルチョコレートの商品には、全てピュアチョコレートを使用しています。あまり聞きなじみのない、ピュアチョコレートとは、日本でも基準が決まっているシンプルな原料で構成されたチョコレートのことをいいます。量産型の安価なチョコレートにはほぼ使われている、植物性油脂やパーム油は一切使われていません。その原料のナチュラルさから、ファンの多いチョコレートです。

 

チョコレートを作る上で、テンパリングと呼ばれる最も大切な工程があります。これは、チョコレートに熱を入れて溶かした後に、改めて固める上で必要になる、チョコレートに含まれるカカオバターの結晶を安定した状態にする温度調整作業のことです。

 

「一般的な作り方だと、固めるために動物性油脂を使います。そうすることで、テンパリングが簡単になるので均一化した生産がしやすくなります。カカオバターには抗酸化作用があるため、酸化する植物性油脂を使用した場合に、香料(バニラ香料以外)が必要になってしまいます。しかしそうすると本来のチョコレートからは、少しずつ離れていってしまうのです」

 

ピュアチョコレートの難しさは、植物性油脂を使わずにテンパリングをする場合に、シビアな温度管理が必要なところにあります。

 

トッピングやさまざまな調合は、チョコレートが固まらない間に行います。そのためには、チョコレートが溶ける融点を一定に保ち、テンパリングを安定して取ることが必要になりますが、部屋の気温が低いとチョコレートがすぐに固まってしまうのです。

 

湯煎の状態を継続することがベターなのですが、チョコレートは水が苦手なので避けたいところ…。これを解決するために吉野さんは、水がなくても湯煎の状態が作れる窯をオリジナルで製作。24時間の除湿とエアコンで室温を一定にした部屋で、窯でチョコレートを溶かし固めることで、均一化してテンパリングが取れるようになったのです。

 

「細やかな温度管理は、小規模の工房で手作業でやっているからこそ実現することでしょう。最も原料がシンプルな商品だと、カカオマス、カカオバター、砂糖、バニラ香料のみ。チョコレート本来の味わいがしっかり残されています」

 

カカオの風味が生きるピュアチョコレートは、香ばしさのあるフレッシュな味わい。シンプルな原料でできているからこそ楽しめるものなのです。

 

自分の惹かれる場所にオープンしたい、それが大津だった

 

「お店をオープンしたのは、2020年のバレンタインデー。開店した時、近所の人にたくさん言われた言葉が『ありがとう』でした。お店を出して喜んでいただけるなんて、初体験でしたね」。吉野さんは嬉しそうにそう話します。もともと京都で生まれ育った吉野さんは、水辺が好きだという理由で、琵琶湖沿いに物件を探しはじめました。

 

「自分たちがやっていて気持ちのいい場所を探したかった。京都にオープンする選択肢もありましたが、観光客が多い町に頼って、その他大勢に埋もれたくなかった。それよりも僕たちのメッセージが生きる町でお店をやりたかったんです」。いざ物件を探してみると、全くの琵琶湖沿いとなるとほぼ公園になっているという状況…。そこで出合ったのが、JR大津駅前からびわ湖へと続く中央大通りでした。

 

「中央大通りは、いわゆる大手ショッピングセンターのエリアがすっぽり入る大きさ。例えばこの店だけじゃなく、中央大通り沿いに立ち寄りやすい同じような店が10軒できれば、歩いていてもっと楽しい町になるのではないかと、いいイメージを描けました」。

 

まちづくりをしているつもりはない。町に溶け込むような、なじむようなお店になれたら。大家さんとの出会いもあり、この場所でお店を始めてから、これまで以上に滋賀県内のあちこちに出かける機会も増えたそうです。

 

 

このチョコレートを一番に届けたいのは、町の人

町の人が、この町をもっと楽しむためのチョコレートを作りたい。吉野さんが大切にしているのは、「おもたせ」になるチョコレートでありたいということです。ここでいうおもたせとは、地元の人が他の場所へ訪れる際に持っていく地元の特産物のこと。外から来た人が、訪れた場所のものを買って持ち帰る「おみやげ」とは少し意味が異なります。

 

「自分の町や地域にはこんなにいいものがあるんだということを、もっと自慢してほしい。そのくらい、滋賀県のポテンシャルを僕は感じています。牛肉も魚も、お茶もある。工芸品も優れていますし。ありすぎて気づいていないのではと思うくらい。本当に、恵まれていますよ!」と吉野さんは目を輝かせます。

 

マンディアンを通して、滋賀県内の農家や業者さんとのコラボも多く実現しています。例えば、大津市内にある「おごとハーブガーデン」の天然ミントを使った『チョコミントとライムクリスピーと、あとパチパチキャンディ。』や大津市内にある「中川誠盛堂茶舗」の日本最古の日本五大銘茶である朝宮茶を使用した『抹茶チョコと黒豆。』など。

 

「『抹茶チョコと黒豆。』の場合だと、中川誠盛堂茶舗さんで初めてお茶をいただいたときの感動が忘れられなかったんです。抹茶チョコレートを作りたいと思っていた矢先だったので、お願いしてコラボが実現しました。この茶葉をチョコレートにすることで、地元のお茶ってこんなに美味しかったんだと再認識してもらえる機会になれたら嬉しいですね。」

 

「比叡山のお坊さんが茶畑を作ったことから、滋賀県は日本茶発祥の土地ともいわれています。滋賀県の煎茶って実は、茶葉の品評会で多くの金賞を受賞しているんです。地元の煎茶が日本一だということを知らない県民の方も、意外と多いのではないでしょうか」

 

アイデアと味わいを優先した上で、地域でまかなえそうな食材は、まず滋賀県や近隣から探します。それは、なるべく地域のものを使いたいという想いから。地産地消という言葉が示すとおり、食の安全だけでなく、商品開発を通して、生産者と販売者の間に顔が見える関係が築かれています。

 

 

三方良しで笑顔になれるものづくり

 

スマイルチョコレートというネーミングそのものにも、お客さん、生産者、販売者がそれぞれ笑顔になれるものづくりをしたいという想いが込められています。「三方良しという言葉があります。原料を育てる生産者が喜ぶ、販売者が生き生きと笑顔で働ける、そこで生まれた商品をお客様が食べて笑顔になる、どれが欠けてもいい循環は生まれません」。笑顔の波及が広がること。この気持ちが、商品開発にも息づいています。

 

「地域の魅力が、商品を通して伝えられれば、こんなに嬉しいことはありません。地域の価値が、地元の中で伝わっていけばいい。町の人が楽しんでいるものが、勝手に外に広がっていく。いい意味で、この町の人がこっそり豊かに楽しんでいることがバレればいいなと思います。よその人に(笑)」

 

素材にこだわるチョコレート専門店がこの町にあることで、滋賀の味わいを楽しめる店がまたひとつ増えました。自分が食べて美味しい、身近な人にもついつい渡したくなる、そんなお菓子をおひとつ、おふたつ、いかがですか?

Information

THE SMILE CHOCOLATE

滋賀県大津市浜町9-25Google Map
営業時間:11:00~19:00
店休日:水曜日
TEL:077-599-4852

オンラインショップ / Instagram / Facebook

 

※上記は2023年2月1日現在の情報となります。

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