#13 手づくりのクラフトミードハウスで生まれる、
「ANTELOPE」の縁を育むミード

「美味しいお酒は、いい縁をつくります」、そう話すのは、ANTELOPE株式会社・醸造家の谷澤優気さん。代表の福井駿さんと共に、2020年に日本初のクラフトミードハウス(醸造所)「ANTELOPE」を立ち上げ、蜂蜜を発酵させてつくる醸造酒・ミードを滋賀県から世界に発信しています。

ミードというお酒の魅力、起業のきっかけや背景、そして今後の展望についてお話を伺いました。

 

一口飲んでうまさに絶句。クラフトミードをつくりたい!

穏やかな住宅街を眺めながら、JR野洲駅から車で約10分ほど行くと、小さな三角形のロゴ看板が掛けられた「ANTELOPE」の工場が見えてきます。中に入ると開放的な空間に、10基ほどのタンクがずらり。「もともとこの場所は、戦後から続く地元の方に愛されるマルヨ製パンというパン工場で、給食用のパンをつくっておられました。初めて内覧して一目惚れ。どうしてもここでやらせて欲しいと大家さんにお願いして、なんとか借りることができました」と谷澤優気さんは、オープン当時を振り返ります。

 

谷澤さんと福井駿さんが出会ったのは、2019年5月。大阪のビアバーで一緒に飲む機会があった際に、ものづくりに対する思いが似ていました。その数ヶ月後、2度目に会った際に、ビールを一緒につくらないか?と福井さんが谷澤さんを誘い、2019年に起業する流れとなりました。

当初はビール製造を考えていた2人が、なぜクラフトミード製造を行っているのでしょうか?

 

「2019年に、デンマークのブリュワリー『Mikkeller』の日本拠点である『Mikkeller Japan』が主催する、ビールの祭典に参加する機会がありました。328種類ものビールが提供されたイベントだったんですが、その時初めてミードに出会ったんです。カカオニブを使ったミードの美味しさに感動しました。こんな飲み物があるんだ!と。この体験がきっかけとなり、ミードの醸造を始めようと思いました

 

ミードとは、はちみつと酵母だけからつくるシンプルな醸造酒。人類最古のお酒で、1万年以上前からあったともいわれています。私たちも実際にミードを飲んでみると、甘く優しい味わいで後味はビールのような炭酸感。ワインよりも苦く、ビールよりも甘いといった感じでしょうか。

 

「ミードを多くの人に楽しんでもらうために、小売価格が高くなりすぎないよう、高価なはちみつはあえて選んでいません。比較研究を重ねた結果、ANTELOPEではミャンマー産の蜂蜜を使用しています。価格が手頃な上に濃厚さが他のものよりもダントツで美味しいんです。また、クラフトビールはホップでできているため苦みがありますが、ミードはもっとピュアな味わい。僕たちはそこにフルーツやスパイスなど副材料を加えることで、クラフトビールでは出会えない幅広い味わいにチャレンジしています」

 

壁床の修繕…タンクからの水漏れ…。DIYでつくった工場

工場はかなり修繕が必要な状態で、地元の人の協力も得ながら、自らの手で壁や床なども塗装し直しました。工場内の修繕やタンクの設置・配管も全て自分たちで行ったといいます。

「一番苦労したのはタンクの設置です。タンクは中国から輸入したもの。搬入も自分たちでやる予定にしていましたが、設計図が少しでもずれていたらタンクが入らないという緊張感がありましたね。配管工事についても未経験の僕たち。パイプとパイプを繋ぎ合わせて一本の道路をつくるような作業でした。3日間かけてやっと完成したと思ったら、配管から水が飛び出したんです。もうその時はオープンを諦めかけましたね(笑)。今正常に動いていることが奇跡のようです」

 

ようやく完成した工場。初めて仕込んだミードは「Giou – 祇王」でした。醸造所の地名にちなんで名付けられた「Giou – 祇王」には、忘れられないエピソードがあると谷澤さんは話します。

 

「シャープな苦みを目指して、材料を贅沢に使ったインパクトのある商品をつくる計画でした。クラウドファンディングのリターンとして送る準備も進む中、全量廃棄することになってしまうトラブルが発生。2000リットルもの量でした。しかし廃棄している間にも『Giou – 祇王』はゆっくり発酵し、熟成が進んでいたんです。試しに飲んでみたら、その美味しいこと。失敗が良い方向に転がって、新しい味わいを発見することに。自分たちが想像していなかったミードの側面に出会えた思い入れ深い初仕込みでした」

 

多くの物語とともに生まれている商品は、現在8種類(※)。ミードのアイデアは、まず実際につくってみることから始まります。試作品はメンバー全員で飲んで、美味しいか美味しくないかで商品化するかどうかを決めます。自分たちが自信を持って提供できるお酒だけを販売します。今後は、クラフトビールやワインにも挑戦していかれるそうです。

※2022年5月25日時点

 

きっかけとなるお酒でありたい

お酒と、お酒のある場所が大好きだという谷澤さん。ANTELOPEでは、定期的にオープンファクトリーを開き、酒づくりの現場を見てもらう機会を提供しています。もちろん工場でも、購入可能。説明を聞いた後は、より一層お酒の価値も上がることでしょう。また地域の方を迎えての納涼祭など、交流の場やきっかけにも積極的に取り組んでいます。

今後のANTELOPEには、どんな展望があるのでしょうか?

 

「お酒の力は、人と人を繋ぎ、縁をつくること。僕は人の感情や温度が見えるのが好きで、お酒はそれを引き出す役割をしてくれます。縁を繋ぐお酒の魅力を知っているからこそ、ただ“飲むこと”ではなく”飲んで『楽しむこと』”の魅力をもっと伝えられたらと思っています」と谷澤さん。

また、ANTELOPEのこだわりは、750mlの瓶のサイズ。「ひとりで飲むためだけのお酒ではなく、人と人が集まり、豊かな時間を過ごしてもらうお酒にしたいからです」

 

今後は、リアルに集まれる場としてテントサウナイベントなども計画中だそう。「ミードに限らず、お酒は全部つくってみたいですね。僕たちが最初に飲んで感動した、甘くて果実感のある、とろっとしたミードにもいつか挑戦したいです。また個人的には、規模が大きくなってもオートメーションにはせず、常に現場に立っていたいです。いつまで瓶詰めできるんだろうと思いながら、毎日仕込み作業をしていますよ」

 

取材後にも、醸造過程や原料について丁寧に説明してくださり、「どうしても話が長くなっちゃうんですよね」と笑う谷澤さん。ANTELOPEのチーム内では、「自分たちが日本一飲み会を楽しむ」という価値観を大切にしているそうです。

 

お酒に情熱を注ぐ人がつくるお酒が、美味しくないわけがない。お土産に購入したミードは、早速夕食の場を盛り上げてくれました。

 

Information

ANTELOPE

滋賀県野洲市永原551(Google Map
営業日時:金曜日のみ 13:00〜20:00(祝日も営業)

ホームページ / Instagram / YouTube

※上記は2022年6月1日現在の情報となります。

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