#04 焼き物のまちを体感する。
信楽焼・明山窯のギャラリー「Ogama」

瀬戸焼や備前焼などと並び、日本六古窯のひとつに数えられる信楽焼。中世から現代まで続く、代表的な陶器の産地です。

 

400年の歴史を持つ窯元「明山窯」が運営する「Ogama(おおがま)」は、ギャラリー、ショップ、陶芸教室が併設されています。陶を通して、信楽の暮らしや文化が体験できる施設です。

 

「Ogama」で体験できること、信楽焼やまちの魅力について、明山窯のブランドマネージャー・石野 啓太さんにお話を伺いました。そうそう、信楽のまちもぷらっと巡ってみましたよ。

 

信楽のランドマークである登り窯

 

道幅の広い国道沿いから一本入ると、一気に道が細くなって上り坂に。傾斜に沿うように、階段状に並ぶレンガ造りの登り窯が見えてきます。さあ、この登り窯が見えたら、「Ogama」に到着です。

 

ギャラリーには、信楽焼の窯元・明山窯の商品を中心とした信楽焼が並び、カフェでは、陶器を使ったカフェ時間が楽しめます。陶芸教室では、たたら(板状に成形した粘土)を使ってお皿やボウルなど自由なかたちの作品を作ることができます。

「『Ogama』は、『自然体の信楽を体験できる場所』をコンセプトに運営しています。オープンは、2010年。ちょうど明山窯の商品を直売できるギャラリーを作ろうというタイミングで、信楽での暮らしや文化を伝えるための施設も併設してはどうかという企画があがったのです。

滋賀県立大学の学生の協力もあり、使われなくなった登り窯と作業小屋が、ギャラリー、ショップ、陶芸教室に生まれ変わりました」と、石野さんは話します。

土地の傾斜を生かした登り窯は、信楽のまちを象徴するランドマーク。火袋と焼成室9室からなる、『連房式登窯(れんぼうしきのぼりがま)』といいます。

 

焼物の生産量が最盛期だった頃には、信楽の中心地には、数多くの登り窯があったのだそうです。「Ogama」にある登り窯も、1995年頃まで一部分は実際に使われていました。覗いてみると、当時の窯の様子を想像することができます。

 

時代と共に変遷してきた、信楽焼窯元 明山窯

信楽焼といえば、狸の陶器が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。右手に徳利、左手に通帳を持った編み笠をかぶって、少し首をかしげた風貌にはなんともいえない愛らしさがありますよね。

 

滋賀県内の各所でもよく見かけるこの狸は、信楽では「八相縁起」の象徴として、明治30年代から作られていたそうです。

もちろんそれ以外にも、信楽ではさまざまな陶器が作られています。時代を通しての主力製品は火鉢でしたが、時代が変わった今では、傘立てや庭園陶器、インテリア、食器など、種類も多岐に渡っています。

 

「創業1622年、400年の歴史を持つ明山窯では、初代の石野 伊助が江戸幕府の『御用茶壺師』であったという文献が残っています。幕府御用のお茶を作るための茶園管理、製造・精製する仕事ですね。江戸後期には、朝鮮通信使の応接用食器を幕府から任命を受けて作っていたこともあります」

明山窯でも、時代の変化を受けて制作物の幅も広がっています。「Ogama」ができたおかげで、それまでなかなか聞けなかった利用者の声が届くようになったそう。

 

子ども用の食器が、大人の方に小皿や飾り皿として求められたりすることもあり、こんな使い方もあるんだ、という現場での新しい気づきは、次の商品企画のアイデアに役立っているといいます。

 

フレキシブルな信楽焼。信楽の土に、可能性を感じて

明山窯を実家とする石野さんは、大学卒業後、東京で数年間建築設計やデザインに携わっていました。現在は、明山窯のブランドマネージャーとして商品企画、デザイン、オンラインショップ管理などを担当。新旧をミックスさせた、これからの陶器の提案を行っています。

石野さんが地元・信楽に戻った時に、改めて、この土地が自分のものづくりの原点となっていることに気づいたのだそう。そして、信楽に連綿と続いている、ものづくりの文化や暮らしぶりを伝えたいと考えるようになったそうです。

 

「信楽焼の魅力は、フレキシブルさにあると私は考えています。例えば、備前焼だと、釉薬を一切使用しないシンプルさが特徴あったり、小鹿田焼だと、飛び鉋(かんな)の模様が有名だったりしますよね。ところが、信楽焼には、そういう決まったスタイルがあまりないんです。

ただ唯一、明山窯で商品を作る上で大切にしていることがあるとすれば、土のあたたかみと力強さ、でしょうか。磁器には出せない手触り感を残し、工業製品のような形状になりすぎないように心がけています」と石野さん。

 

近年では、ACTUS(SLOW HOUSEブランド)との協働による食器シリーズにて土そのものの無垢な表情を生かした、新しい信楽焼を提案。釉薬を使わずに自然の色味を生かすことで、信楽焼の荒々しさは上手く残しながらも、再解釈することに成功しています。

また、力を入れているのが「HIJICA」というブランドです。

 

「HIJICA」とは「土と火」「土と日(日常)」を表す造語で、インテリアからエクステリアなど空間そのものまで扱う陶器の“Homeware”ブランドです。陶器と信楽の土でできることの可能性を、ライフスタイルという領域の中で、このブランドを通して考えたいと話します。

 

普段着の、飾らない信楽を感じられる場所

私たちも、「Ogama」の周りをちょっと探索してみました。まちは3時間くらいあれば、ぐるっと巡れる大きさ。ゆるく細い坂道を上ったり下ったりしながら感じたのは、地に足がついた安定感でした。

 

自然が近く、職住近接。一軒家の隣に、登り窯があり、工房では職人さんが物作りをしている風景が見られます。まさに、環境と仕事と暮らしが一体化しています。

「近々、『Ogama』にもうひとつ施設が増える予定です。一棟貸しの宿泊施設です。住むように泊まって、信楽のまちを体感してもらえたら嬉しい。

陶器だけでなく、歴史・文化が根付いたこの土地そのものも、信楽の魅力。職人さんの普段の生活を擬似体験するのも、価値のある体験ではないかなって思うんです。僕たちが暮らす日常、普段の信楽をぜひのぞいてみてください」

ここならではの地域文化や信楽の生活を感じることができる「Ogama」。これまで信楽焼に触れたことはありましたが、実際にまちに訪れたのは初体験。

 

まちを歩いてみることで、この場所で生まれているんだという感慨深さと共に、信楽焼をより身近に感じられることができました。

Information

Ogama

滋賀県甲賀市信楽町長野947(Google Map
TEL:0748-82-8066
営業時間:10:00〜16:00(L.O.16:00)
定休日:水・木曜日
ホームページ / Instagram

 

※上記は記事公開時点の情報となります。詳しくは施設HPや公式SNSにてご確認ください。

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