#09 神様の体内で勝運を祈る…
天空のパワースポット「太郎坊宮」

「勝利と幸福を授ける神様」として霊験あらたかな「太郎坊宮(正式名称:阿賀神社)」。地域では、“たろぼうさん”という愛称で親しまれている神社です。勝運を願って、プロスポーツ選手や企業経営者も数多く足を運んでいます。

 

その立地から、天空のパワースポットとも呼ばれる「太郎坊宮」の歴史や魅力について、太郎坊宮 権禰宜の松井佑一さんにお話を伺いました。

 

 

約1400年前に、聖徳太子も祈った神様の宿る赤神山

 

近江鉄道八日市線 太郎坊宮前駅から徒歩20分ほど。心地よい風の吹き抜ける田んぼの間をぬって続く参道の先に、三角形の山が見えてきます。岩肌が露出し、神秘的な風貌をした赤神山は、昔から神様の宿る霊山であると信じられてきた場所。太郎坊宮は、この赤神山のちょうど中腹に位置します。青い空を背景にそびえ立つ山際と太郎坊宮の堂々たる存在は、まさにここでしか見られない風景美でしょう。

 

 

「春は桜並木、夏は新緑、秋は紅葉に冬は雪景色と、四季折々の風景を楽しめる太郎坊宮は、訪れる人を飽きさせません。そして、ここ赤神山は、神様そのもの。今私たちがいる参集殿は、ちょうど神様のお体の上にあるのですよ」と松井さん。

 

 

太郎坊宮の始まりは、約1400年前。正式な年代は「古すぎてわからない」のだそう。太郎坊宮に残る言い伝えでは、赤神山で最初に祈りをささげたのは、聖徳太子。大阪・四天王寺の建設に必要な瓦を求めて、この地域に訪れた際に、“近くの峰から、尊い気配を感じる。この山に宿る神が地域の人々を助けてくれている”として山の頂上で神様を祀ったことが、太郎坊宮の始まりとされています。それからというもの、地域の人々は山に手を合わせて祈るようになり、暮らしに寄り添った神様として大切に守られてきました。

 

 

神様の名前は、「正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)」という、まるで呪文のような長さ。“私は勝った!勝った!鮮やかに速やかに勝った!”という雄叫びのような意味なのだとか。ここでの勝負の相手は、敵ではなく己。「勝つ」という言葉には、己との戦いに勝つという本意があります。己を振り返り、己を高めようとする場所なのです。

 

「修業の場として、多くの修行僧も訪れました。比叡山延暦寺を開いた伝教大師・最澄もその中のひとりです。平安時代には、源義経も戦の前に訪れたという伝説もあります」

 

 

山一帯が太郎坊宮の境内。夫婦岩・本殿まで続く、742段の石段

山の麓から本殿まで、742段の石段が続いています。現在は、途中まで車で登ることができますが、当時はこの石段を全て歩いて登り、お参りしていました。歴史上の人物も、私たちと同じように一段一段踏みしめながら登っていたのかと考えると、感慨深い気持ちになります。

 

 

「かつては鳥居が隙間なく立ち並んでいて、雨もしのげるほどだったんですよ」と松井さん。石段を囲うように連なる木造の鳥居も、明治時代には1000基ほど並んでいたそう。もともと鳥居とは、願いが叶ったお礼として奉納されるもの。鳥居の数は、太郎坊宮の神様が願いを叶えた人々の数。いかに多くの人々の支えになっていたのかが伺えます。

 

 

有名な「夫婦岩」は、参集殿から本殿までの石段を登っていく手前にあります。最近では、フォトスポットとして、テレビやSNSで注目を集めている場所です。2つの巨大な岩の間は幅約80cmで、この間を通り抜けると、即座に願いが叶うといわれてきました。夫婦岩を通り抜けた先にある本殿で神様にお会いする前に、心を清めるという意味もあります。ただ、悪心がある人は、「岩にはさまれる」という言い伝えもあるのだとか。私たちも、心して通ることにします。

 

 

夫婦岩の間を通りながら触れた岩肌は、ひんやりと冷たい感触。目線を上げてみると、両端にそびえ立つ約12mの岩の高さに圧倒されます。

 

 

この夫婦岩は、自身の御座所を求めた太郎坊宮の神様が、大岩を2つに割り開いて通られた跡だと伝わっています。ところで太郎坊宮の“太郎坊”とは、天狗の名前。赤神山には「太郎坊天狗」が住んでおり、神様を守っていると考えられてきました。

 

 

「夫婦岩の間には天狗の巣があるといわれていました。そのため、江戸時代には夫婦岩の間には近寄ってはいけないと記す書物もあったそうです。この地域では『嘘をつくと、太郎坊宮の岩にはさまれるで!』という子どもに向けた戒めが残されています。そのせいか、子どもは『妖怪はさみ岩』と呼び、行きたがらないスポットにもなっています」と松井さんは笑います。

 

 

そんな松井さんの一押しスポットは、赤神山の北峰・山頂からの景色。「赤神山は標高350m。山道を登りきった先にある山頂からは、滋賀県の旧八日市市街や鈴鹿山脈をはじめ、甲賀市地域や、天気が良ければ三重県の山々まで望むことができるそう。登り切った達成感もひとしおだそう!

 

 

自分の願いを叶える、世界で一つだけの「お守り」を作ろう

 

太郎坊宮の魅力は、境内巡りだけではありません。雨の日でも楽しめるのが、『おまもりづくり』です。

 

「自分でお守りを作るという文化は、1000年前からありました。奈良時代や平安時代には、神社にお参りして神様の御心である“みたま(お札)”をいただき、特別な布で仕立てた袋に納めて持ち歩いていました。お守りとは、自分だけの大切な神様なのです。そうした当時の歴史・文化を若い世代に伝えたいという思いから現代に再現したのが、この『おまもりづくり』体験です。」

 

 

選べるお守り袋の種類は、約150種類。古くから伝わる縁起の良い模様や希少な柄など、全国各地から織布を取り寄せて、お守り袋に仕立てています。お守りの作り方はシンプル。まず、お守り袋と組紐を選びます。そして、太郎坊宮にて清められた「願い紙」に自分で願い事を書き、神様の“みたま”と「願い紙」を袋に納めて、完成です。

 

 

「太郎坊宮の神様は、手を合わせてただお願いするだけでは、思いの全てを叶えては下さいません。お願いと同時に神様の前で誓いを立て、それを遂げた人にだけ力を貸し与えてくださるのです。また、頂いたお守りは1年後に元の神社へお返しするのが習わしです。同じお守りを長く持つことは、神様にお願いをし続けているということ。1年間、守ってくださった神様へのお礼を兼ねて、1年ごとに神社にお返しするのがいいでしょう」と松井さんは話します。

 

 

約1400年前に聖徳太子が祈りを奉げた「太郎坊宮」。境内をあちこち探索すると、自然の岩や祠が見つけられ、神秘的な雰囲気と歴史を体感できます。天狗に守られながら、太郎坊宮の神様は、今もなお、この地域や太郎坊宮を愛する人たちを見守ってくれていることでしょう。

 

 

 

 

Information

太郎坊・阿賀神社(太郎坊宮)

滋賀県東近江市小脇町2247番地(Google Map
TEL:0748-23-1341
営業:神社へのお参りは24時間可

ホームページ

 

※上記は2022年2月28日現在の情報となります。

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