#45 パティシエを経験して感じた想い、
マカロンとショコラが織りなす専門店「FUSE」

形も色も可愛い。皆さんの思うマカロンはなんですか?もしかしたらイメージが変わるかもしれません。パティシエとして長く経験してきたからこそ、自分がこうしたいと考えるお店をオープンさせた「FUSE(フューズ)」。そこにはどんな想いが詰め込まれているのでしょう。

自分の想う店作り。それがマカロンだった。

大津市、島ノ関駅から歩いて約2分。びわ湖がよく見える場所に、マカロン&ショコラ専門店「FUSE」があります。

 

中に入るとコンクリートの内装になっており「シックなお店」という印象。厨房が見えており、お子さんが中の作業を見て夢中になっているそうです。インタビュー中にマカロンが出来あがる光景を見て、良い大人も夢中になったのはここだけの話…

 

シックな場所だからこそ、色鮮やかなマカロンがとても映えています。

 

マカロンとチョコレート。何故この2種類なのでしょう?

 

「1番はフードロスが全くない、そこに尽きますね。」

そう話すのは「FUSE」を営むオーナーシェフの布施文彦さん。パティシエ時代にトップオブパティシエ実技コンテストで優勝を果たすなど、様々なコンテストで受賞をされている凄腕の持ち主。長年、ケーキを作ってこられたからこその想いがありました。

 

「ケーキは賞味期限が短かったり切れ端が出てしまったり、目に見えないものも含めてロスが多過ぎるんですよね。埋めたショーケースの95%が売れても残り5%はロスになります。60%しか来てくれなかったら40%もロスになってしまう。毎日毎日ロスの積み重ねみたいな営業になってしまうんで」

 

その経験からたどり着いたのがマカロン。作っている段階で割れてしまったものはお客様にお配りしていたり、包材もコンパクトにまとめるなど、SDGsにも力を入れておられます。布施さんの、無駄を出さないことへの強い想いが伝わってきます。

 

また、ここで作られたマカロンは冷凍保存をしても味が落ちません。水分量が多いとそうはいきませんが、布施さんは挟むクリームの水分量を緻密に計算することで、それを可能なものとしました。そうすることで美味しいマカロンを無駄なく安定的に提供することができるのですね。

 

ところで皆さんはマカロンの味を知っていますか?

 

そもそも食べたことがないという方も、意外に少なくないのではないでしょうか?実はここにも布施さんの個性を発揮するための狙いが隠れています。

「マカロンはシュークリームなどと比べて食べた経験値が皆さんあんまりないので、そこをうまく突ければ自分の良さっていうのがストレートに伝わりやすいかなっていう思いがあってマカロンにしました。」

 

もう一つのお菓子チョコレートはニーズが高く、この2つでやろうと決めておられたそうです。チョコでナッツをコーティングしたお菓子、サクサク食感のお菓子、クッキーもあったりと種類豊富。

 

可愛いパッケージに入っていてどれも美味しそう!

マカロンの概念をくつがえす!?美味しさの秘訣とは?

お店に並ぶマカロンはどれも魅力的。どれにしようか悩みながらもなんとか選び一口食べると、しっとり口当たりが良い…。こんなにもしっとりした食感は初めて!

 

「マカロンって硬いイメージがあるって結構おっしゃるんです」

 

FUSEさんのマカロンを食べるまではそう思っていました。実際、今まで食べたことのあるマカロンは硬めでサクサク食感。むしろそれが普通だと。

しっとりさせる技術。パティシエとして経験を積んだ布施さんの技術が活かされています。なんと、1つのマカロンを作るのに3日もの時間をかけています!

 

「ケーキ・焼き菓子を作っていると、マカロンを作る時間は本当に限られてきます。僕、逆にマカロンとチョコレートしかやらないんで全振り出来るんですよ。時間だけじゃなく、知識とか技術など今まで培ったものをすべて注いで作っています」

 

パティシエの方達もその知識はもちろん持っておられますが、ケーキも作っているとそこまで手が回らないそう。専門店だからこそ集中的に出来る強みですね。

 

マカロンを作るのに3日間…一体どんな行程が?

 

「まず皮を作るんですけど。マカロンの皮ってめちゃくちゃ硬いんですよ」

 

そう言うと実際にマカロンの皮を机に思い切り叩きつける布施さん。その音は「カンカン!」とてもお菓子から出る音ではありません。卵白が焼けることで硬くなるそうですが、ここまでとは…。まさにマカロンは硬いというイメージを植え付けられます。そのままクリームをサンドして冷蔵で丸々1日寝かせ水分を馴染ませるそうです。この時点で作る・寝かすの行程で2日間もうけています。

 

ここからどうやってしっとりさせるのでしょう…?

 

「更に寝かしたものを今度はケースに入れて冷凍します。冷凍したら水分が固まりますよね?凍る時に水分にトゲトゲができ、水分の細胞を全部傷つけていくんですよ。ところが、急速冷凍で固めるとそのトゲを出さずにそのまま周りを飲み込んで保湿したまま、解凍してもしっとり。パンとかがそうなんですけど。」

 

その急速冷凍をしてしっとりさせている…、かと思いきや!

 

「逆にゆっくり冷凍させるんですね。そしたらトゲが大きくなって、解凍した時にトゲで水分の細胞が破れているので、全部バシャ―って出るんです。その水分が皮の方に全部。砂糖って元々の白い砂糖の状態に戻りたいっていう性質があって、それがマカロンの表面だけ働くので、中には水を通すんですけど皮には膜がはられている状態。なので閉じ込めちゃうんですよ。」

 

解凍した時の水分をあえて利用する事でマカロンにしっとりさを出す…裏の発想とはこの事かもしれませんね。長期間冷凍保存することが可能なのでフードロスも出ないそうです。

 

「あとは色・見た目。コンテストでエアブラシを使ったりするんですけど、これを吹き付けることによって出す繊細な色合い、色の付け方・魅せ方っていうのはコンテストをして学んだことだと思います。決して無駄じゃないというのはありますね。」

 

1つ1つのマカロンに複数の色が使用されており、もはやアート作品のよう…。こんなにも華やかで美味しいマカロンができるのですから、それなりの時間や工程が必要になるのもうなずけます。

 

布施さんのオススメは店名と同じ名前の「FUSE」。マカロンでは珍しいグレーに青と黄色が差し色で入っていてとてもスタイリッシュ。トップオブパティシエ実技コンテストで優勝したケーキの味をマカロンにリメイクした逸品です。一口食べると様々な味わいが広がって、とても美味!これが世界の味…

 

 

FUSEに並んでいるマカロンは全部で12種類。その中で毎月3種は必ず新作を出しておられます!正面から見て右の3種が新作。

 

「お客様からの『今月の新作は右の3つ?』みたいな注文も徐々に定着してきたかな?っていうのはありますね。それと、オープンして1年経ったので去年の復刻版を出してみようと。定番、復刻、新作3種を合わせた12種の組み合わせでいこうかなと思っていますね。」

 

これは毎月チェックしなくては!

緻密な計算を積み重ね、超えてきたハードル

 

コンテストを通じ「自分のパフォーマンスを素直に発揮するにはやっぱり独立するべきかな?」と感じていた布施さん。

オープンから1年。お店を立ち上げるための経緯やお菓子でロスを出さない為にはどうするか。緻密に計画を立ててFUSEを営んでおられます。ですがそんな布施さんにも立ち上げまでには多くの苦労が…

 

「パティシエとしてずっとケーキをやってきました。周りの仲間や諸先輩方が皆さんケーキで成功されていった一方で、そのケーキで失敗された方も沢山いらっしゃる。そこに独立の話をすると『やめとけ』『ムリや、それじゃやっていかれへん』と、ほとんどの方に言われました。」

 

これは先輩たちの経験があるからこそ出る愛の反対だと話します。それでもお店を立ち上げる決心をされますが、なんとグランドオープン時はたった1組のお客様しか並ばれてなかったそう…

 

「1組入って終わり!やったんですよ(笑) 業者さんも心配したり『やっぱり大丈夫かこのスタイル…』とか、広告してないんかとか、もう本当に色々言われましたけど(笑)」

 

その中でもやっぱり来てくださる方1組1組に、「マカロンどうでしたか?召し上がられたことありますか?」などのお声がけは地道に続けたそうです。そのおかげもあり1周年の時には行列が出来るようになり、その光景に「うわ、1年積み上げて良かったなぁ…」と実感されています。

 

「最初の頃は試作する時間が短すぎて上手いこと行かんかったんで、オーブンと仲良くなれんかったんですよ。まぁ、今もあんま仲良くないんですけど(笑) その時にめちゃめちゃマカロンの皮が余ったんですよ。」

 

沢山マカロン作りに失敗し「終わった…」なんて思ったことも。「これじゃあフードロスが出ている…」と。ですが、長年パティシエをやって来られてきたからこそ、このピンチを活かして新たなお菓子を作り上げてしまったのです。それがマカロネージュという商品。

 

卵白・砂糖・アーモンド。これを使用しているモノなら代用が出来ると考え、失敗したマカロンの皮をスノーボールのようなホロホロクッキーに大変身した逸品。ホロホロの中にサクサクの食感もあってこれまた美味しい!

 

ロスをなくすための様々な計画やマカロンへの想い。長年、パティシエとして腕を振るいコンテストでも優勝を果たした布施さんは滋賀県東近江市出身。マカロンを買ってびわ湖を見ながら食べて欲しい…そんな気持ちも込められた「FUSE」。お店に入ったらマカロンに目が奪われること間違いなしです。

Information

FUSE macaron&chocolat

滋賀県大津市島の関12-11(Google Map
営業時間:11:00~18:00
定休日:月火水日
駐車場:無 お近くパーキング推奨
オンラインショップ / Instagram 

 

※上記は2024年9月1日現在の情報となります。

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