#58 本気で体験してほしいジップスライド!
「フォレストアドベンチャー・栗東」が森に託す未来

 木々の間を風を切って滑り降りる瞬間。滋賀県栗東市の「フォレストアドベンチャー・栗東」では、自然と共生する冒険の時間が待っています。関西屈指の自然体験フィールドとして注目を集めるこの場所には、地域とともに森を活かし、未来へつなげる仕掛けが詰まっています。運営会社である株式会社しびりこの代表取締役・林優里さんに、その思いと取り組みについて伺いました。

森と一体になれるジップスライド、その魅力

 

森に足を踏み入れた瞬間から感じられる空気の匂いや木漏れ日。日常とは異なる時間の流れがそこにはあるようです。フォレストアドベンチャー・栗東は、森をそのまま活かした自然共生型のアウトドアパーク。

 

木々の中を縫うように設計された数々のアクティビティの中でも、ひときわ注目を集めているのが「ジップスライド」です。樹上15mの高さから100m滑り降りるアトラクションで難易度や高さの選択肢があり、家族や大人グループも楽しめます。主軸の2プランは、本格的な樹上アスレチックを楽しめる「アドベンチャーコース」と、はじめての方やお子さまのアドベンチャーデビューにもぴったりな「キャノピーコース」。

「アドベンチャーコース」は小学4年生以上または身長140cm以上、「キャノピーコース」は身長110cm以上から利用可能です。

 

今回、取材班も特別に、アドベンチャーコースを体験させていただきました。前日まで雨予報だった天気もなんとか持ちこたえ、木漏れ日が降り注ぐ運動日和になりました。

 

ハーネスをしっかりと装着し、安全対策が万全であることは頭では理解しているものの、いざ高さのある足場を自分の手と足だけで進んでいくとなると、やはりドキドキします。

 

木の上に設置された橋をいくつも渡り歩き、最後のクライマックスとしてジップスライドで滑り降りる。この一連の流れが、遊びにきた人にとって忘れられない体験になるといいます。「初めての方には、『こんな高さを自分が渡るなんて!』という驚きと達成感を味わっていただけるようです。大人も子どもも夢中になりますよ」

 

特に、アドベンチャーコースの追加プラン「アドベンチャーコース・プラス」で体験できる、目玉アクティビティのターザンスイングは圧巻です!樹の上から目の前にあるネットに飛び移るスリル満点なアクティビティは、まさに「飛んでいる」ような開放感。樹上から滑り出し、風を全身で感じながら対岸へ向かうその体験は、誰もが「またやりたい」と思うほど爽快です。

 

「自然の中を飛ぶような感覚なんです。非日常のスリルを味わいながら、同時に森とつながっている感覚もある。ターザンスイング目当てで来られるお客様は多いですよ」と、林優里さんは楽しげです。

高所恐怖症のメンバーも含め、取材班全員無事にゴールへ到着!手に汗をにじませながらも、次第に自分の感覚と森のリズムが合ってきて、心地よいスリルを全身で味わうことができました。

 

栗東市・金勝地域の自然が舞台

施設があるのは、滋賀県栗東市南部の金勝(こんぜ)地域です。金勝アルプスと呼ばれる山々に囲まれたこの場所は、ハイキングや森林浴の名所でもあります。すぐそばには道の駅「こんぜの里りっとう」や、歴史ある金勝寺(こんしょうじ)もあり、観光拠点としても注目され始めています。

 

栗東市の森林面積は2,327ヘクタールで、市の総面積の約44%を占めています。これは、金勝地域を中心に豊かな自然環境が広がっていることを表しています「このエリアは直射日光が少ないので、森の木陰が気持ちよく、過ごしやすさを感じられる環境です。自然が本当に豊かなんです。スギやヒノキが整然と立ち並ぶ針葉樹林は、私たちのアクティビティにとって理想的な環境でした。森の高さや管理状態もよく、安全面でも非常に良かったですね」

 

全国に46か所(2025年7月時点)あるフォレストアドベンチャーですが、植生や地形が異なるため、どの施設も唯一無二のアクティビティ構成になっているそうです。森林を活用した空中アクティビティはヨーロッパでは一般的で、それと同様の安全基準とメンテナンス体制が導入されています。

 

「日本にはヨーロッパのような安全基準がありませんが、フォレストアドベンチャーではヨーロッパと同等の安全基準を満しており、道具や手順もそれに則って整備しています」と林さん。「道具は共通でも、森に生えている木の種類や斜面の特徴が違えば、設計も変わってくるんです」

 

フォレストアドベンチャー・栗東を運営する株式会社しびりこという会社名は、「滋賀」「琵琶湖」「栗東」「金勝(こんぜ)」の頭文字を組み合わせたものです。林さんは芸術高校から沖縄の芸術系大学へ進学したのち、地元に戻って自然や植物への関心を軸にキャリアをスタートさせました。フォレストアドベンチャー・栗東のオープニングスタッフとして現場に立ち、会社を立ち上げ独立し、現在は代表として運営に関わっています。

里山保全と観光資源化の両立を目指して

 

開業から8年を迎えたフォレストアドベンチャー・栗東は、地元の山の所有者との信頼関係を築きながら、少しずつ地域とのつながりを広げてきました。

 

栗東市だけでなく日本中の里山では、放置森林や林業の担い手不足といった課題もあります。フォレストアドベンチャー・栗東では、そうした背景も見据えながら、持続可能な森のあり方を模索しています。地域住民や山の所有者と日常的に顔を合わせ、森の整備について相談しながら進める姿勢も、この施設の大きな特徴です。地域の人たちとのつながりが、施設運営を支える土台になっているのです。

 

「私たちだけが良ければいいという考え方はしていません。滋賀県には琵琶湖以外にも素晴らしい場所がたくさんあります。その魅力を地域全体で発信していきたいと考えています」

林さんは公益社団法人びわこビジターズビューローにも加盟し、観光地としての地域の価値を高める活動にも力を入れています。施設を訪れた方には、周辺の飲食店や観光スポットを紹介するカードを配布するなど、地元企業や住民との連携を重視し、地域回遊の促進にも取り組んでいます。

 

「森の中でアクティビティを楽しんだ後、地元の食事処に立ち寄っていただく。その流れが地域全体の活性化につながると思います」。施設内では、フォレストアドベンチャーのほかに、クラフト体験やマウンテンバイクなど、さまざまな自然体験が用意され、より幅広い層が楽しめるようになっています。

 

「“琵琶湖しかない”と思われがちな滋賀県ですが、山や里山、自然の美しさを感じられる場所もたくさんあります。フォレストアドベンチャー・栗東がその入り口になって、地域の他の魅力にもつながっていけたら嬉しいです」

 

森林空間の活用は、林野庁が推進する「森林サービス産業」としても注目されている分野です。一次産業だけでなく、観光や教育や研修、地域文化の継承といった幅広い文脈で森を活かす取り組みを続けていきたいと林さんは語ります。

子どもたちへの自然体験を広げたい

 

林さんが今後特に力を入れたいのが、子どもたちの自然体験です。施設ではすでに観察会やワークショップなどが行われており、隣接する宿泊施設と連携した自然体験合宿の計画も進行中です。

 

「都市部では、子どもたちが自然に触れる機会が本当に減っています。だからこそ、定期的に森で遊び、学べる環境を整えたいんです。ここでの体験が、将来の森林や地域への関心につながると信じています」。自然との接点を一度限りの思い出で終わらせるのではなく、繰り返し訪れる習慣や仕組みをつくっていく。そんな循環こそが、未来の里山を支える力になるのかもしれません。

 

「子どもたちが『また来たい!』と思えるような体験を提供することで、森が“身近な場所”になる。それが長い目で見たときに、地域や自然を守ることにつながると思います」

 

フォレストアドベンチャー・栗東は、非日常的な遊びの場であると同時に、地域と人、自然をつなぐ舞台でもあります。その枝葉の先に、どんな物語が生まれていくのか。森とともに歩む未来は、ここから始まっているのです。

Information

フォレストアドベンチャー・栗東

滋賀県栗東市観音寺459 (Google map)
営業時間:9:00〜日没(季節により変動あり)
定休日:不定休(季節により変動あり)
TEL:090-5794-0420

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