#59 比良の里山を守り、比良の里山に生きる。
栄養たっぷりの「比良ぺリラ」が次世代につなぐ物語
すっきり爽やかな飲み口の赤しそジュース、「比良ぺリラ」。ソーダやミルクで割ったり、ゼリーにしたり。老若男女幅広い世代に支持される人気ドリンクが滋賀県にあります。
ここでていねいに育てられる赤しそには、地域の里山保全、そして文化を未来へつないでいく役割があるのだそうです。その想いを紐解いていきます。
大地と光と風と水が育てた、赤しそジュース
ぺリラ(Perilla)とは、しその学名。「比良ぺリラ」はその名のとおり、滋賀県大津市の“比良”地区で育てられた“赤しそ”で作ったジュースです。
琵琶湖を眼下に望み、急峻な1000メートル級の比良山を背に構える。比良地区は、山・里・湖が近接した、まさに湖西を象徴する地形です。
収穫の夏、赤しそ畑に伺うと、絨毯さながら、農地一面に赤紫色の鮮やかな光景が広がっていました。葉は大人の手のひらほどのサイズにまで育っています。
「赤しそってけっこう大きくなるんですよ。普通の畑で見る分には、だいたい40〜50センチくらいでしょうか。でも、ここではしっかり育てるので、大人の腰より高くなります。子どもだったら隠れちゃってどこにいるか分からないくらいになりますね(笑)」
そうにこやかに話すのは、「一般社団法人 比良里山クラブ」代表理事の三浦 美香さん。比良の里山を愛し、2003年の団体設立から20年余り、その魅力を伝える活動に携わってきました。
ここにある赤しそはすべてジュース専用にこだわりながら育てられたものです。
「種を取り、苗を育てて植え付けるということを毎年繰り返しています。2009年からスタートし、今や、しっかり“比良産の赤しそ”と言えるまでになったと思います」
赤しそジュースの酸味にはお酢やクエン酸がよく使われるのですが、比良ぺリラの場合はレモン果汁を使用。「酸味が強く出過ぎずお子さんも飲みやすく、広く楽しめる味わいに仕上げています」と三浦さん。
3倍濃縮の比良ぺリラ。まずは定番、さっぱり、キリッと「ソーダ割り」。適度な酸味と炭酸で、夏にぴったりの一杯。原液に甘さがあるため炭酸水は無糖のものがベターです!
お子さんには、よく冷やした牛乳でつくる「ミルク割り」もおすすめ。少し原液を濃いめにつくると、とろみがついて飲むヨーグルト風に!酸味が抑えられ、牛乳の甘さも加わることでよりスウィーティに楽しめます。
そのほか、お湯割りでホットドリンクにするもよし、アルコールで割るもよし。楽しみ方は、実にさまざま。割材によってバリエーション豊かな比良ぺリラが味わえます。
里山を保全するために…
ビタミンやミネラル成分に富んでいる赤しそは、貧血や冷え性、疲労回復、食欲増進など、種々の健康維持に役立つとされています。ポリフェノールの一種であるロスマリン酸には、花粉症などのアレルギー症状緩和、抗酸化作用が期待できるとも。
加えてここの赤しそは、栽培開始以来ずっと無農薬・有機肥料で育てられてきたのだそう。商品へと加工する際も、添加物は一切使用しません。「なによりずっとオーガニックにこだわって育てており、滋賀県の“環境こだわり農産物”の認証も毎年継続して受けています」と三浦さん。
比良山地のふもと、大地と光と風と水で育つ比良ぺリラ。身体にも環境にも優しい、栄養に満ちた地域ブランド飲料は、なぜこの地に生まれることになったのでしょうか。
「赤しそを栽培するきっかけは獣害対策でした」
比良地域一帯の里山には、今も江戸末期に築かれた“シシ垣”が残っています。イノシシやシカ、サルが多く、獣害を防ぐために当時、農民たちが総出で何キロにも渡り石を積み上げたと伝えられています。長きに渡る野生動物との強制共存を実践しつつ、いろんな対策をしても作物が被害を受けてきた現状があったと三浦さんは話します。
(提供:比良里山クラブ)
「被害を受けない作物はなにかないか、と試行錯誤する中で『どうやら、赤しそには手を付けないらしい』ということが判明し、赤しそを育てることが決まったのです」
赤しそは暑さにも強く、猛暑にも耐えられる植物。多くの方に楽しんでもらえるジュースにして販売することになりました。
「赤しそジュースというのは全国にたくさんあります。やるからには、全国で一番美味しい、きれい、楽しめるものを目指そうと思って出発しました」
(提供:比良里山クラブ)
そうして比良里山クラブで販売が始まった「比良ぺリラ」。以前ライター業に従事していた三浦さんにとっては「私の夢が叶った商品」だったともいいます。
「ライター時代、たくさんのコピーを書いてきたわけですが、どれも他人が作った商品に対してのことなんですよね。『いつか自分が作った商品のコピーを書いてみたい!』という想いを持っていました」
(提供:比良里山クラブ)
「なので比良ぺリラができたときは、デザインこそプロにお願いをしましたけど、パンフレットやパネルの文章は全部自分で考えてましたね(笑) 」
比良の里山を保全し、農地を放棄しないようにとの想いからできた、赤しそ飲料「比良ぺリラ」。
比良里山クラブは、地域の課題と向き合いながら、比良ぺリラや活動拠点である「比良まほろばの里」を基盤とした地域づくりを目指しています。
比良まほろばの里で、比良の自然とつながる
比良里山クラブは非営利型一般社団法人で、収益事業と非営利事業との2本柱で成り立っています。比良ぺリラの販売収益が、里山の保全や自然体験、子どもたちの環境学習に活かされています。
その中心をなすのが、大津市南比良にある「比良まほろばの里」。赤しそ畑もこの広大な敷地内にあり、多面的な里山保全のあり方を誰もが体験しながら、自然の中でイベントやワークショップが催されています。
「ここには6つのゾーンがあって、その中のどこかと接点が持てればOK。例えば「私は赤しそ栽培し、比良ぺリラに関わりたい」という人、「私はソバを育ててみたい!」という人がいてもいいわけです。『あなたの【いい場所】を見つけてみてください』をコンセプトとした、比良の自然や地域とかかわるきっかけづくりなんです」
(提供:比良里山クラブ)
大学との連携や学生さんの受け入れ、ホテルや事業者との協働などあらゆるアプローチで魅力ある地域資源を伝えてきた比良里山クラブ。なかでも同じ比良地域にある「びわこ成蹊スポーツ大学」とは、継続的な協力関係にあるといいます。
サッカー部の学生さんを中心に、赤しその栽培や刈り取りのボランティアに数年にわたって参加。大学においては、開学20周年の記念品やオープンキャンパスのウェルカムドリンクとして、比良ぺリラを使用されたそうです。「どうやって地域に貢献すべきかと考えていたなか、団体としても、大学としても、地域連携の良いきっかけになったと思います」と三浦さんは話します。
「子どもたちの体験プログラムでは、山から薪を拾ってきて火を焚き、石窯ピザを焼いて楽しんでもらったりしています。子どもはやっぱり火遊び大好きですね(笑) “家では絶対やったらあかんで!”と言いながら、こういう場だからこそ、火を焚く体験をしてもらうんです」
比良まほろばの里のファームでは、在来種のそばの栽培も行います。収穫後にはそば打ちをし実際に食べてもらうことで、お子さんたちの食育にも役立ててもらっているそうです。
また、“地域サロン・比良ラボ”の開催を通じては、お子さんからご年配の方まで幅広い地域住民の方との交流を図っています。
「雪がたくさん降れば学生たちと駅前の雪かきチームを結成したり、“比良八講(※)”の広報や企画のお手伝いしたりしています。地元自治会との協働も増え、知名度も上がり、人づてで比良里山クラブにボランティアに来てくださる方も多く、それは本当にありがたいです」
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※ ひらはっこう。毎年3月26日、天台宗の僧侶によって執り行われる比良の例祭。水難者祈祷、びわ湖への感謝、水源となる山々の保全などが趣旨とされる。湖国に春の訪れを告げる行事としても知られる。
比良山地を知り、かかわることでファンを増やしていく。この地域のつなぎ役を担うのが「比良里山クラブ」なのです。
「比良ぺリラが人を連れてくる」
(提供:比良里山クラブ)
2018年には、水や副材料をさらに追求した新製品「比良ぺリララグジュアリー」が完成しました。こちらは薄めず飲むストレートタイプでありながら、含まれるしそエキスは3倍濃縮の比良ぺリラと同等という贅沢さは、まさにラグジュアリー。ギフトや記念品など特別なシーンに採用される、受注生産のみで展開されているプレミアム商品です。
こうして販売が順調な一方、三浦さんの心には裏腹な想いもまたあったそうです。
「里山保全をテーマに開発した商品にもかかわらず、比良ぺリラそのものがどんどん人気が出てしまい、私たちのコンセプトよりもモノが先行してしまって…、これでいいの?と感じた時期もありました」
(提供:比良里山クラブ)
「最近では、そんな迷いもなくなりました」と三浦さんは続けます。「後先の順番はどうであれ、比良ぺリラの販売で得た収益が、比良の里山保全、地域活動や環境学習などの非営利事業に活かされていることには変わりありません。この事業はうちの大黒柱なんです」
子どもたちと赤しその収穫をし、その葉で実際にジュース作りを体験してもらうワークショップもされています。
「子どもたちがいつも決まって驚くシーンが2つあるんです。ひとつは、赤しそを煮出していくと、赤紫色の葉っぱが青くなること。そしてもうひとつが、煮出した液にレモン果汁を入れると鮮やかに発色する瞬間です。色素が酸に反応して発色することは大人ならばすぐ理解できると思うのですが、子どもにとっては不思議な体験になるんですよ。そういう小さな驚きや発見、気づきをこの場所でたくさん経験してほしいと考えています」
生まれ育った比良という地域に恩返しがしたかったと話す三浦さん。比良ぺリラを中心とした比良まほろばの里物語は、これからも未来につながっていくことでしょう。
「今となっては、比良ぺリラが人を連れてきてくれているように感じます。商品を入り口としつつも、結果的に私たちの思いに共感してもらえたら嬉しいです」
里山からの贈り物、比良ぺリラ。さあ、あなたも滋賀産赤しそジュースで、魅力ある地域、豊かな里山を応援してみませんか?
Information
比良まほろばの里(一般社団法人 比良里山クラブ)
滋賀県大津市南比良(Google Map)
TEL:077-527-2833(事務局)
MAIL:info@hira-satoyama.net
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