#55 食べられるブーケで滋賀の魅力を伝えるアーティストが、「畑のハナタバ」で伝えたいこと

華やかで、食べられるベジフルフラワーをご存知でしょうか?色とりどりの野菜と果物を「フラワーブーケ」に見立てた、野菜・果物ブーケのこと。受け取った瞬間からしっかり重く、美味しい香りもしてきます。滋賀県産の食材にこだわったブーケを提供する、ベジフルフラワーアーティストの和田直子さんが、2024年11月にショップ「湖風舎atelier&kitchen」をオープンされました。野菜やブーケへの思いやショップで行われることなどを、和田さんにお伺いしました。

病からの復帰。どうしたら野菜の魅力を届けられるんだろう?

 

滋賀県大津市生まれ、大津市育ちの和田直子さん。ご主人が近江牛レストランの料理長として務めていたこともあり、料理はもともと身近な存在でした。和田さんは一般企業で働いていましたが、病を期に退職。自宅療養を続けるなかで食事の大切さにあらためて気付かされたそうです。そのあと社会復帰を志し、野菜ソムリエの資格を2010年に取得。その後、ご主人の働くレストランで働きながら、学びを深めました。

 

「野菜ソムリエの資格を取って活動している時に、野菜のブーケを知ったんです。こんなのあるんだ、やってみたいなと直感的に思って学び始めました」と和田さん。もともとフラワーアレンジメントの資格も持っており、豊かな色彩感覚をお持ちだった和田さん。学べば学ぶほど、ベジフルフラワーの魅力にとりつかれていきます。野菜ソムリエとして野菜の大切さや美味しさをどれだけ口頭で伝えても、なかなか食べてもらえないという現実がありました。どうしたら野菜の魅力を届けられるのだろう……。ひとつの答えがベジフルフラワーにありました。

 

「ブーケとして野菜を手渡せば、家に持って帰ってもらえて、そのまま食べてもらえるかもしれないと考えました。そこでレシピ付きでお渡ししたところ、じゃあ作ってみようかな、と実際に食べてもらえる確率が増えたんです。よしこれだと思いましたね。味の想像がつかなかったり、食べ方がわからないような珍しい野菜は、スーパーで見かけても手が伸びないですよね。でもブーケに入っていたことで調理して食べてみると、意外に美味しかったとか、こんなふうに調理すればよかったのかと新しい発見や気づきにもつながると思うんです」

ベジフルフラワーとして届けて、野菜をもっと身近に

 

和田さんは現在、オーダーを受けて販売したり、参加型のワークショップを開催したりとさまざまなやり方でブーケを届けています。和田さんがつくるベジフルフラワーは、基本的に食べることが目的のブーケ。食べることを大切にしたいので、口に入れても嫌にならないようなデコレーションにこだわっています。

 

野菜は小さなものでも8〜10種類、大きなものだと15〜20種類が使われています。旬の野菜がほとんどで、全て滋賀県産。春夏秋冬によって扱う野菜が変わるので、花のブーケと同じように、季節感を演出することもできるのです。野菜のレシピを入れて完成。「受け取ったらその日のうちに食べてねと、アナウンスしています」。まさに野菜ファースト!

 

野菜ソムリエになった時の活動のコンセプトは、「生産者と消費者(生活者)のかけはし」になることでした。野菜に親しみを持ってもらいたいという思いは、一貫して変わっていません。魅せ方と届け方を少し変えただけで、野菜を身近にするきっかけを生み出したのです。

 

こんなに美味しい滋賀県産の野菜たち!農家さんに寄り添って

 

野菜について勉強を深めていく中で、和田さんが驚いたのが、滋賀県人の野菜の消費量の少なさでした。また生産量や消費量を国の統計で調べてみると、関西は関東よりも低いという結果も。和田さんの周りにはさまざまな生産者がいて、みな一生懸命農業をしているのに、滋賀県の人が地元の食材を食べていないのはもったいない!と感じました。

 

「滋賀県で作られている野菜には、想像以上にさまざまな種類があります。日野菜や下田なす、弥平唐辛子などの伝統野菜、スティックブロッコリーなどのイタリア野菜もつくられています。色や形が珍しくても、意外と使い勝手が良かったりするんですよ」

 

アレンジメント用ブーケ制作のために仕入れる野菜も、農家さんから直接仕入れる場合は、なるべく野菜は指定しないようにしています。その理由は、できるだけ農家さんの生産管理の状況に合う野菜を活用したいから。農業はどうしても天候に左右されるため、育たなかったり、逆に育ちすぎたりしてしまうことが多いのです。「その分、旬の野菜が楽しめるメリットもあります。届く野菜の顔を見て、どんなブーケにしようかなと考えるのも楽しい作業です」

 

野菜の仕入れは、2通りのルートがあるとのこと。直売所で購入するものと、知り合いの紹介やSNSで出会った信頼できる約10組の農家さんから仕入れるものがあります。農家さんにお願いするときは、まず必ず畑を見に行くそうです。現場を訪れる度に、お仕事振りを見ることで農業が身近に感じられるようになり、農家さんに対する感謝の気持ちが芽生えて、より一層丁寧にお客様へ手渡したいと考えるようになってきたといいます。

 

「スーパーで買う野菜とは新鮮さが違う。みずみずしくて本当に美味しいんです。ワークショップなどでブーケをつくる時には、野菜の紹介だけでなく、農家さんのストーリーも一緒に伝えるようにしています。どんなふうに育ってきて収穫された野菜なのか、どんな農家さんが育ててくれているのかなど、その背景がわかるだけでも、ありがたみがぜんぜん変わると思うんです。お話をするとお客さんも『絶対食べます!』と言ってくださいます。野菜を通して、優しさの循環が回っていったらいいなと思います」

 

「湖風舎 atelier&kitchen」を野菜コミュニティが育まれる場所にしたい

 

最近、ベジフルフラワーアーティストとして、空間デザインやワークショップ、講義など、各所から引っ張りだこの和田さんですが、2024年11月に「湖風舎 atelier&kitchen」をオープンさせました。1階はカフェと八百屋さざなみの野菜販売(週に2〜3日程度)、2階はワークショップや資格講座を開催するためのアトリエになっています。

 

「フラワーショップで花を買ってブーケをつくるように、このお店で野菜を買ってブーケをつくる、というようなことがやりたいと思っています。花を選ぶように野菜を選ぶって、想像しただけでワクワクしませんか?」

 

今後は野菜だけではなく、お茶農家やハーブ農家からの出品も行われる予定。カフェではアイスクリームの提供も絶賛準備中です。(※2024年12月現在)

 

「食べ方がわからない」の問題を解決するために、将来的には野菜の料理教室も開催予定。今後は結婚式やパーティなどで、滋賀県内の野菜を使った会場デコレーションなども予定しています。披露宴の手土産が野菜だなんて、嬉しいプレゼントですよね。「この場所は野菜を軸に、コミュニケーションが育まれるような場所にしたい。丁寧につくられた滋賀県の野菜を、美味しく楽しく食べてほしい。みんなで一緒に野菜ライフを盛り上げていきたいです」

 

Information

湖風舎 atelier&kitchen

湖風舎 atelier&kitchen
滋賀県大津市馬場1丁目7番17号(Google map
※営業日はSNSよりご確認ください

・湖風舎 atelier&kitchen
Instagram

・畑のハナタバ
ホームページ / Instagram / Facebook / 公式LINE

 

※上記は2025年1月1日現在の情報となります。

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