#46 漁師の思いから作られたお店!
琵琶鱒が堪能できる専門店「山本屋魚濱」

「琵琶湖の宝石」と言われる固有種をご存知ですか?世界中どこを探しても琵琶湖にしか生息していない魚…それが「琵琶鱒」。そんな希少な魚をお得に味わえるのが、長浜駅から徒歩約10分の場所にある「山本屋魚濱」。
お店を営んでいるのは実際に琵琶鱒を捕りに行かれている漁師さんたち。琵琶鱒専門店を立ち上げたきっかけ、魅力などについてお伺いしました。

 

琵琶鱒の美味しさを世の中の人に知ってほしい

お店に入る際、最初にお出迎えしてくれたのは本日の主役である「琵琶鱒」。とても大きくそのサイズはなんと49センチ!今回お話を伺った店長の木田さん曰く、この大きさが釣れたら「やったー!」となり、毎日2〜3本は釣れたらいいなと思うそう。

入ってすぐに琵琶鱒を感じられるお店です。

 

お店を立ち上げたきっかけ、それは琵琶鱒の販売方法にあるそう。

「琵琶鱒って基本、個人売買なんですよ。捕ってきたら自分で売る先を探して売らないと。漁協で管理してとかじゃないんで」

 

その販売方法の為か琵琶鱒を釣っても売るところがなく、売れないのであれば琵琶鱒を捕りにいけない。まさに悪循環だと仰います。そんな問題点を解決したい思いから漁師でもあり、このお店のオーナーである山本さんが「だったら自分達で店作ろうぜ!」と言ったことが始まりなのだそうです。

 

それからは仲間の漁師達に声を掛け、お店を開く賛同を求めていました。ですがその答えは「お金出せへん」という言葉達…。協力できないと言われながらも、山本さんはめげず「なら俺が店作るから!」と宣言。2020年2月に琵琶鱒専門店「山本屋魚濱」を立ち上げられました。凄い行動力ですね!

 

この話に木田さんは「たまたま僕も自分のやってた仕事を辞めたタイミングやったんで、『お前やれや!』『魚捌けるやろ?』みたいな感じで、軽いノリで言われたんです(笑)」と笑います。前職は漁や釣り関係の仕事をされていたそうで、飲食や料理の仕事は特にしたことがなかったそう。ですが自分で釣ってきた魚を自分で捌いて、友人達に食べさせていた経験があり、魚の扱いができるだろうと話が来たそうです。

絶対的な確信。琵琶鱒の魅力とは

「一口でも食べてくれたらこっちのもの」

確信をもって断言する程の美味しさ。「琵琶湖の宝石」とも言われる琵琶鱒の魅力とは一体どのようなものでしょう?

 

「油が乗っているのにしつこくない、上品な油、甘味ですね。琵琶湖にしかいない固有種ってのも武器の1つ。なかなか出回らないからこそ知る人ぞ知る魚」

 

目にする機会が少ないからこそ、希少価値を上げているのかもしれません。湖で育つ魚だからこそアニサキスの心配も要らないそうです。今となってはテレビでも取り上げてくれる機会も増えており、テレビを見てお店に来てくれたり、個人で調べて来てくれるお客様が滋賀県の方を始め、他府県からも来られるようになったのだとか。

 

そんな山本屋にあるメニューは当然、琵琶鱒づくし!お造りや炙りはもちろん、丼に燻製、西京焼き、中には琵琶鱒の生ハムなど、定番のものから珍しい料理まで琵琶鱒が盛りだくさん!

 

その中でも特に目を惹いたのは「ビワマス御膳 二之重」!

 

二段重ねの重箱。蓋を開けてまず現れたのは、ご飯の上に隙間なく敷き詰められた琵琶鱒のお刺身。薬味で綺麗に飾られ、その見た目はまさに宝石箱のよう…。

一口食べた瞬間にフワッと広がるうま味。臭みも一切なく美味しい!

実は食べるまであまりイメージができなかった「油が乗っているのにしつこくない、上品な油、甘味」を一瞬にして理解しました。

 

二段目にはバター醤油で炒め、ソテーにした琵琶鱒。四切れも入っておりとてもボリューミー。先程のお刺身とは違ってフワッと、でもトロッとした食感…バターとの相性も抜群!セットで付いてくるあら汁と小鉢にも琵琶鱒が使われています。

 

他にも、丼はご飯を見せまいと言わんばかりに何切れもお刺身が使用されていたり、お造りは特に美味しいお腹と背中部分を贅沢に厚切りにして提供されています。あまりにも大きくてお客様から「細かくしてくれませんか?」と言われるほど!

 

一品一品にふんだんに使用されているため、やはり琵琶鱒はたくさん必要になってきます。木田さん自身で釣ったものはもちろん、仲間の漁師10人程にお願いして大きいものから小さいものまで全ての琵琶鱒を買い取ったりしているそうです。それでも足りないんだとか!

そんな琵琶鱒をここではお手頃な値段で頂けるのです。

 

「琵琶鱒の価値を知っている人は、安すぎると思ってくれるんですけど、知らない人はメニューを見た際に値段を見て高いと思って違う場所に行っちゃうんです。これも知名度の問題で…(笑)」

 

昔は築地に持っていくと、「こんな川魚いらん!」ともいわれ蹴られたり、食べず嫌いで「琵琶湖の魚は臭いから要らない」という偏見すらもあったそう。

まだまだ知られていない琵琶鱒の魅力。この記事を読んで、琵琶鱒と山本屋魚濱の魅力を是非味わってみてはいかがでしょうか!

トローリングを用いて新鮮な琵琶鱒を提供

新鮮でとても美味しい琵琶鱒。旬の時期は冬。釣れない時期でもあるそうですが冷たい水で身が引き締まって脂も乗っており、大きいサイズも小さいサイズも安定して美味しいのだとか!

 

「ネットとかでは、夏が旬って紹介されているんですけど、僕的には間違いだと思っています。それでも旬と言われるのは、夏は網で取れた琵琶鱒が出回りやすくなっていて目に入る機会が増えているから。夏場は刺し網をする漁師さんが動き出すんです。産卵前に『今のうちにエサを食べよう!』と狂ってるんで(笑)産卵を控えている琵琶鱒は栄養が卵に持って行かれるので身の脂が抜けてしまうんです。」

 

毎朝漁に出て琵琶鱒を釣り、調理する木田さんだからこそ出てくる言葉ですね。

 

漁師の朝はとても早い。冬の時期は朝6時から9時まで、夏になると朝の3時半頃には漁へ。3時間で10キロほど船を進め、トローリングで琵琶鱒を釣っておられます。スプーンという金属のルアーを魚がいるところまで引っ張るという釣法。1匹ずつ丁寧に釣りあげます。琵琶鱒は約水深30mの場所にいることが多く、目的の場所までルアーを沈め、一定の速度を保って引っ張りながら釣れるのを待つというもの。ただ待つだけでは釣れない時もあるので、その際は別の場所でトローリングをトライするのだとか。

 

「琵琶鱒は口が柔らかいので、掛かってからが難しいですね。結構暴れるのでその反動で口がプチッと切れて、口だけ残ってしまうんです」

 

それだけではなく、魚群探知機に映っていても釣れないときもあれば、水が通常より濁っていてもやっぱり釣れない。風が強い日はそもそも漁に出ることも難しい。風や波の揺れがルアーに影響を与えるため一定の速度で引っ張ることは難しく、速度が早くなったり遅くなったりすると、琵琶鱒は違和感を感じバレてしまう。などなど、日々変わる状況に、話を聞くだけでも難しい事が伝わってきます。

毎日状況が変わるからこそ1匹も捕れない日もよくあることで、3時間で15匹ほど釣れると好成績だと仰います。

 

そして重要なのが、琵琶鱒を釣った後、船の上で活締めをし血を抜いてしまうこと。そしてお店に戻ったらすぐ内臓を取り出して保管します。一晩でも内臓を残したまま放置してしまうとあばらのほうからドロドロになってすぐ傷んでしまうのだとか。船の上で下処理が出来るのは、漁師だからこその強みでしょう。

 

木田さんはトローリング釣法にこだわりを持っておられます。網で魚を取る方法の場合、夜に網をセットし琵琶鱒が掛かるのを待つのですが、夜に取れた魚が網に掛かったまま一晩過ごしてしまうと朝に回収する際に半分の魚は死んでしまっているのだそうです。生きたまま釣るからこそ、最高の状態で美味しく提供することができるのですね!

 

毎日琵琶鱒の漁、料理をしている漁師兼店長だからこその知識や魅力を感じられました。

 

「琵琶鱒が美味しいから。世の中の人に知ってもらいたい」そんな漁師の思いから出来た世界で1つしかないお店。滋賀の魅力でもあり、希少な魚をたっぷり堪能できる琵琶鱒の専門店に足を是非運んでください。あなたも、一口食べればトリコになることでしょう。

Information

山本屋魚濱

滋賀県長浜市元浜町7-2(Google Map
定休日:不定休
営業時間:11:00~15:00、18:00~21:00(LO20:00)
※夜は予約のある日のみ営業。予約は当日15時まで。
また、営業時間は変更となる場合がありますので、最新情報は店舗公式SNSにてご確認ください。
TEL:0749-59-3407

ホームページ / オンラインショップ / Facebook / Instagram

 

※上記は2024年9月1日現在の情報となります。

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